• 秋月 偲希

【ありのまま】

ある夏の日、アリの家族はせっせと食料を運んでいました。


こどもアリはママさんアリにききました。


「どうして、たくさんご飯があるのに、たくさん運ばないといけないの?」


ママさんアリはこたえました。


「冬になるとね、食料がまったくなくなるの。


だから、そのためにお家にたくさん置いとくんだよ。」


パパさんアリは言いました。


「家族で冬を快適に過ごすためさ。」


そこに キリギリスがやってきました。


キリギリスは冬仕度をせずにお散歩してばかりいました。


こどもアリがいいました。


「キリギリスさん、食料を集めなくて大丈夫なの?」


「夏を感じているんだ。」


「どうして?」


「僕の冬仕度だよ。」


アリの家族は首をかしげ、またせっせと食料を運びはじめました。


秋が来ました。


キリギリスは秋になっても何もせずに過ごしています。


こどもアリが


「何をしているの?」ときくと


「秋を感じているのさ。」


そういうばかり。


いよいよ、冬がやってきました。


アリの家族はたくさんの食料があるお家で過ごしていました。


そこにお腹をすかせて困ったキリギリスがやってきました。


「食料をわけてくれませんか?このお礼はかならずします。」


ママさんアリは自分の好きなことを我慢して、


頑張って集めた食料をあまり渡したくありませんでした。


「どうして食料を集めなかったのですか?」


「僕は僕のままでいたいんだ。

けど、冬の間にきっと僕を必要とする日がくるはずだから。」


今にも倒れそうなキリギリスをみて、アリの家族は食料をわけました。


「どうぞ、お食べください。」


キリギリスは喜び、その日は帰っていきました。


冬が長く続き、アリの家族の食料がなくなりました。


お腹がすいているのと、寒さで心も冷たくなっていきます。


考えることも暗いことばかり。


「ぼくたちどうなるのかな?」


こどもアリは泣きながらパパとママにたずねます。


そんなときに、キリギリスがやってきました。


「もう食料はありません。どうぞ、お帰りください。」


そう言うと、キリギリスが明るい音楽を奏でました。


その音楽は春のようで、暖かく心地よく


アリさん家族の心に温かさを与えました。


「このまえのお礼にやってきました。」


そうして、次は情熱的な音楽を奏ではじめました。


アリさん家族は楽しくなり、みんなで踊りました。


夏のように汗をかき、気分も高まります。


ロマンチックな音楽にかわると、


アリの家族は、家族の大切さを感じ、みんなへの感謝の気持ちを伝えました。


「キリギリスさん、ありがとう。冬の寒さに火を灯してくれて。」