• 秋月 偲希

【気の弱いウツボ】

あるところに気の弱いウツボがいた

海のギャングと呼ばれている凶暴なウツボ

なのに、岩陰にずっと隠れている1匹のウツボ

いつもビクビクしていて、他のウツボたちからからかわれている

「おい、弱虫!早くでてこいよ。」

「お前、本当に俺たちと同じウツボか?」

今日も他のウツボたちが去っていくのをじっと待っている

「はぁ、こんなの嫌だな。」

どこかにいったのを確認して、岩陰からそっとでてみる

海藻の間を泳ぎ、色鮮やかなお魚さんたちがいるところへと向かう

「キレイなお魚さんたち。楽しそうだな」

ウツボは隠れて、楽しく泳ぎ回っているお魚たちをみていた

そこへ、ふわふわとクラゲがやってきた

「そこで何してるの?」

ワッ!とウツボは驚いて、岩のすき間に隠れる

「そんな驚かなくてもいいのにー。」

ウツボは恐る恐る顔をだす

「ご、ごめんなさい。」

「そこで何してるの?」

「えっと、キレイなお魚さんたちをみてるよ」

「どうして?」

「見ているだけでワクワクするんだ!とっても楽しそう。」

「じゃあ、どうして一緒に遊ばないの?」

「ぼく怖がられてるから、行ったらびっくりさせちゃうでしょ? それとこんな性格だから、きっと嫌われてしまうよ。」

「どんな性格なの?」

たくさん聞いてくるクラゲさんに戸惑いつつ、ウツボはこたえる

「こんな見た目なのに弱虫で、うじうじしてて、優柔不断だし…。」

クラゲが言った

「優しいんだね!」

ウツボは首をかしげた

「だって、みんなのことを考えてるから思うことでしょ。 すごいね、ウツボくん。」

ウツボはまだ首をかしげる

「どんな性格だっていいんだよ! それは神さまからの贈りものなんだから。」

クラゲはふわふわと漂いながら

「心の優しいウツボくん、ぼくは好きだけどな。」

そういうと、またふわふわとどこかへいってしまった

「変なクラゲさんだったな。でも、面白かった。」

ウツボはにっこりと笑い、いつもの岩陰に戻った