• 秋月 偲希

【理想下げ装置】

なぜ、人間は満足しないのだろうか

欲しいものを手に入れているはずなのに、

ないものに焦点を置き、

不平・不満を垂れ流している


一人の男がそれを打開すべく、ある装置をつくった

その人の 理想を下げる装置を


結婚できないと嘆いている女は 男に対し高い理想を抱いている

男も同じく 理想に程遠い自分が邪魔をして 上手くいかなかったりする


装置をつくった男には自信があった

これで世界が救えると


自分自身を満たすことができれば、誰とも競わなくてもいい

無駄な争いをすることもないのだ


装置をつかった実験がはじまった


「自信がない人に自信を授けます」

「すぐに結婚相手をあなたに」

「毎日に充実を、毎日に幸せを」


たちまち人が集まり、多くの人がその装置を使用した

大勢が小さなことで幸せを感じ 満足するようになった


みんなが使っていくことで、「基準」が徐々に下がっていった

生きているだけで 満足するようになったのだ

装置をつくった男は はじめは王様状態で

大勢の人を動かし、

幸せを与えている自分に満たされていた


それが今や、みんな植物のように突っ立っているだけ


男は喪失感、孤独感に襲われ、

ついに 自ら装置をつかった