• 秋月 偲希

飛べない機体

「皆さま、当機は夏を離陸しまして、ただ今水平飛行へはいっております

秋への到着時刻は、まだ未定でございますがもうそろそろだと思われます

ごゆっくり空の旅をお楽しみください」

もう、そろそろか待ちにまった秋は…

こんなに心が弾んでるなんて夏に失礼かな

「ただいまシートベルト着用のサインが消えましたが、

飛行中は突然揺れることがございます。

皆さまの安全のため、座席におつきの際には、

常にシートベルトをお締めください」

さてと、秋に近づくまで何をしようか。

なにしたらいいんだろう

ガタガタガタガタ・・・

「皆さま、乱気流の影響で機体が揺れております。

座席につき、シートベルトをお締めください」

どうしよう、不安になっていく

秋に向かうのが不安になる

センチメンタルな風が吹きつけるこの頃、締めつけられる

シートベルトのせいかな

乱気流で乱されるココロころころ

助けを呼ぶにも自身なさげな救命道具、酸素マスク

そんな命を救うものよりも、今は膝掛けにしている毛布が救い

ひとりでいる機体のなか、恐怖のあまり叫んで叫んで喉が切れる

乱気流のなか、頭のなかに入ってくるのは、

なかなかの、心を乱す思い出ばかり

こんなときこそ、楽しい思い出を…

思い出そうとしてもネガティブモンスターが食べちゃう

ぱくぱくぱくぱく…

食べないで、お願い食べないで

ごくん

あ、

ネガティブモンスターが大きくなっちゃった

[負けるな、危険]

へんな標識が目の前にたった

ポンっ

救命道具が落ちてきた

こんなのいらない

このまま乗り切ってやるんだ

強がりが邪魔をしてしまう

その強がりはわたしをみて言いやがる

「素直になれよ」

鼻で笑いながら

誰のせいで素直になれないと思っているんだ

ポンっ

酸素マスクが落ちてきた

息がしにくい、苦しい

目の前でぶらんぶらんしている酸素マスクになかなか手が伸ばせない

カットウ

カットウ

カットウ

乱気流、食べちゃえ

ごっくん

「皆さま、まもなく着陸します

機体が完全に停止し、座席ベルトの着用サインが消えるまで

お席にお座りになってお待ちください」