• 秋月 偲希

【牙】

あるところにトラがいました。


小さいころから、1匹でいる臆病なトラ。


他の動物たちとは接することなく、自分の棲家がお気に入り。


いつものように、のんびりと昼寝をしているときに


象がのらりくらりと歩いてきました。


トラは自分の棲家を奪われるかもしれないと思い、


象のところへ向かい、牙を出して威嚇しました。


象は急にでてきた、トラに驚きそそくさと離れていきました。


ただ、散歩をしていただけなのに。


トラは一安心しましたが、なんだか寂しくなりました。


また、お昼寝をしだすと今度はミーアキャットの家族がやってきました。


小さいにしろ、食料を奪っていくかもしれないと思い、


ミーアキャットの近くまでいき、牙を出して威嚇しました。


お父さんミーアキャットは家族を守るため、威嚇しはじめました。


その姿はプルプルと震えていました。


トラはなんだか切なくなり、自分の棲家にもどりました。


ミーアキャットは急いで、その場から逃げ出しました。


トラは喉がかわき、近くの川に向かいました。


そこでは、カバと小鳥が仲睦まじく おしゃべりしていました。


トラは少し離れて、その光景をみていました。


「どうして自分にはこんな鋭い牙があるのだろう。


そのせいで誰も仲良くしてくれない」


トラはひとりが寂しかったのです。


しかし、仲良くなる術をしらず、牙があるせいだと思っていたのです。


小鳥はカバの背中に乗り、カバは楽しそうにしています。


「オレもあんな風に笑えたらな」


そういうと、トラは信じられない光景を目にしました。


カバが大きな口を開け、その中に小鳥が入っていったのです。


よくみると、カバにはトラと同じような大きな鋭い牙がありました。


「危ないっ!」


トラは小鳥を助けようと全速力ではしりました。


小鳥はそれにびっくりして羽ばたいていきました。


「どうしたんだい?トラさん」


「君が小鳥を食べようとしていたから助けにきたんだ」


カバは大きな声で笑いだしました。


「ぼくが小鳥さんを食べる?そんなことしないよー


歯についていた草をとってもらおうとしてたんだ」


トラはキョトンとしました。


「そんな大きな牙があるのに、小鳥は怖くないのか?」


それを聞いて、カバもキョトンとしました。


「どうして怖いんだい?」


「オレは牙があるせいで恐れられて、誰も仲良くしてくれない」


カバはトラに言いました。


「牙をむけるから、敵になるんだ」


小鳥は少し離れてすべてを聞いていました。


そして、トラとカバのもとへ戻ってきました。


「トラさん、勘違いしてごめんなさい。


私を守ろうとしてくれたんだね。ありがとう」


トラはじんわりと温かいものが


自分のカラダのなかを通っていくのを感じて、


とても幸せな気持ちになりました。