• 秋月 偲希

【湯加減】

むかし、むかし、あるところにおじいさんがいた。


それは癒しの達人で、今でいう銭湯のようなものをつくり、


疲れた人々の憩いの場となっていた。


憩いの場を作るのも一苦労。


なにせ体力勝負なところがあるからだ。


おじいさんはもう歳だということで二人の弟子をとった。


ひとりは頑張り屋さんで何事にも一生懸命、


もうひとりは、少しサボり癖があり、いい加減、


対照的なふたりであった。


おじいさんはふたりに技術を教えた。


薪割り、火の焚き方...


いよいよ実践のときがきた。


一生懸命な弟子は薪をたくさん割り、準備し、火を起こし、


火吹き棒を使って、力任せに息を入れた。


轟々と音を立てて燃えさかる炎に弟子は満足気になった。


しかし、おじいさんがやってきて怒鳴りつけた。


「何をやっておるのじゃ!これじゃあ、癒されるどころか茹で上がるわ」


それでも、一生懸命の弟子は休まず火を焚つづけていた。


あたりを見渡すと、顔を真っ赤にして倒れ込んでいる者が何人かいた。


おじいさんは言った。


「もうひとりの弟子のところを見てみよ」


一生懸命の弟子がもうひとりの弟子のところへといった。


そこに入っている人たちは、みんなにこやかで楽しそうだった。


そこにいい加減な弟子もいた。


一緒に和やかに談笑している。


一生懸命の弟子はおじいさんにいった。


「火の番もできないやつは破門したほうがいい!」


おじいさんはこたえた。


「お前は出来ていたのか?わしから見たら、あいつのほうが何倍も良くできておるわ」


いい加減な弟子は、入っている人に湯加減を聞いたり、


火を焚きすぎないように程よく休んでいた。


おじいさんはいった。


「何事も加減が大事なんじゃ」